北広島町「AIでメンタルヘルスケア」実証レポート ~広島イーグル株式会社・3年連続「健康経営優良法人」認定企業の取り組み
広島イーグル株式会社において、アドダイスのヘルスケアAI「ResQ AI」を活用したメンタルヘルスケアの実証実験を実施しました。約3ヶ月間にわたりスマートウォッチで従業員18名のバイタルを計測・AI解析した結果、重度の疲れを抱えた方の発見、またレポートによる介入で疲労スコアが半減した事例も確認されるなど、メンタルヘルス対策におけるAI活用の有効性が実証されました。
お客様プロフィール
| 社名 | 広島イーグル株式会社 健康経営優良法人2024・2025・2026(中小規模法人部門/ブライト500)認定企業 |
| 事業内容 | 製造業/プレス加工部品・切削加工部品の製造。一部自社使用の金型の設計・製作 |
| 所在地 | 広島県山県郡北広島町 |
1.3年連続「健康経営優良法人」認定企業の取り組み
広島イーグル株式会社(以下、広島イーグル)は、イーグル工業(EKK)グループの一員として高度なプレス加工や切削加工技術を駆使し、世界トップシェアを誇る車載用メカニカルシールをはじめ自動車関連の精密部品を製造・販売しています。
アドダイスとの出会いは、広島県の「The Meet 広島オープンアクセラレーター Gov-Tech-Challenge」です。この中で北広島町が掲げた「みんなの暮らしをデジタルで便利に楽しく!」等の課題に対し、アドダイスが提案した「ResQ AIを活用した心身の健康見守り」が採択されたことがきっかけです。
同社は「従業員1人1人の幸福を実現するための健康経営」を経営方針として掲げており、経済産業省の「健康経営優良法人(中小規模法人部門/ブライト500)」を2024年、2025年、2026年と3年連続で取得。さらに広島県の「令和6年度広島県健康経営優良企業」にも選ばれるなど、従業員の健康を大切にする企業文化を持っています。
実証先企業の選定は北広島町が行いましたが、広島イーグル様の健康経営に対する高い意識が、本実証実験の趣旨(従業員の心身の健康見守り)と合致していたことが、実証先に選ばれた大きな理由であると推測できます。
広島イーグル様には、従来の健康診断やストレスチェックなど「点の見守り」ではカバーしきれない「線(日常)の見守り」の必要性を感じていたこと、さらに一律の健康施策ではなく、本当にケアが必要な人に手を差し伸べる仕組みを目指したい意向があったことが、実証にご参加いただけた背景にあります。

広島イーグル株式会社/牛のキャラクターは北広島町イメージキャラクター「花田舞(もう)太郎」
2.実証実験の概要
実証実験の概要は以下の通りです。
- 期間:2025年9月29日〜12月21日(約3ヶ月間)
- 参加者:広島イーグル株式会社 従業員 18名
- 手法:
- スマートウォッチ(ResQ BandまたはFitBit)でバイタルデータを継続測定
- ヘルスケアAI(ResQ AI)でデータを解析し、心の状態をスコアリング
- AI解析結果とアドバイスを記載したレポートを毎週・各個人へ送付
- 介入群(9名)→ 個人ごとに異なる「個別レポート」を提供
- コントロール群(9名)→ 全員同じ内容の「汎用レポート」を提供
- レポート内容の違いが行動変容や健康状態に与える影響を比較検証
- 実証期間中に2回のInBody計測(身体組成)を実施し、筋肉量・体脂肪率などを測定
実証実験の目的
- 1)メンタル不調の早期検知(未病対策)
未病状態をAIで早期に検知し、適切なタイミングでのアプローチ(介入)を可能にする体制を目指す - 2)行動変容とレジリエンス向上の検証
毎週のレポートで自分の状態を客観的に把握し、運動や休息など自発的な行動変容や、ストレスに対するレジリエンス(回復力)の向上にどう影響するかを検証する - 3)生活リズムの乱れの可視化
就寝・起床時刻のばらつきや睡眠の質をモニタリングし、生活リズムの乱れを客観的に把握する - 4)レポート送付(介入)と心身指標の相関検証
週に一度のレポートによる介入が、メンタルにどのような影響を与えるかを分析する

介入群とコントロール群で異なるレポートを送付

週次レポート(イメージ)
3.実証結果 〜「心の疲労」は、早期に気づくことができれば改善できる
3ヶ月の実証実験を経て、18名のデータから以下の結果が判明しました。
※ここで言う「疲労」「疲れ」とは、ストレスや落ち込みなど主に「心の疲れ」を指します。
「隠れ疲労」の発見と可視化
1日の平均歩数が1万歩を超えるなど活動量の多い方でも、疲労が「重度」と判定された方が多数確認されました。これにより、「活動的=心身ともに健康」という単純な相関ではないことが明らかになりました。
むしろ過活動と睡眠不足が重なると、本人も周囲も気づきにくい「隠れ疲労」の状態になっており、活動に対して回復が追いつかない状態が続けば心身の状態は低下します。組織として「負荷と回復のバランス」を定量的に捉え、健全な状態を支える仕組みづくりが重要であると示唆されます。

過活動と睡眠不足が「隠れ疲労」を招く
行動変容(睡眠の量とリズムの改善等)による疲労スコアの半減
レポートからの気づきで睡眠時間を約1時間増やした結果、疲労度のスコアが半分以下になった事例が確認されました。「1時間多く寝る」という小さな行動変容でも、疲労回復に大きな影響を与える可能性があることが示されています。
また、休日の大幅な「寝だめ」(社会的時差ぼけ/ソーシャルジェットラグ)は、かえって疲労を高めることも示唆され、日々の生活リズムを整えることの重要性も実証されました。
レポートによる介入が気づきを促し、行動変容につながることを示唆
介入群・コントロール群の双方に週次レポートを送付した結果、疲れのスコアが改善したケースが見られました。定期的に客観的データで自分の状態を知り、自分に適した行動を選択して運動や休息などの行動変容を起こすことで、心の疲れを低減できる可能性が示されました。

気づきと行動変容で、心の疲れスコアが改善
潜在的「重度疲労者」の100%検知
実証開始当初、参加者の半数以上(9名)が「重度疲労」という、心理的負荷が顕著に高い状態にあることが判明しました。年1回のストレスチェックでは拾いきれない「不調の芽(潜伏していた重度のメンタル疲労)」を、ResQ AIで気づくことに成功しました。
4.参加者の声
2026年2月、実証に参加いただいた3名の方にお話を伺いました。

実証実験にご協力いただいた皆様 左から藤田康弘様(業務部・設備管理課)、大石俊也様(業務部部長)、藤井香様(業務部・業務課、安全環境)
藤田康弘様(業務部・設備管理課)
データと自己認識のギャップについて
「自分は疲れていないと思っても、疲れのスコアが高かったのが意外でした。帰宅後や睡眠時など自分はリラックスしている、休めていると思っていましたが、データを見て休めてない部分もあるかな?と感じました。生活習慣をちょっと見直そうと、努力意識は高まりました」
行動変容:生活習慣や休日の過ごし方の変化
「休日は家のことをすることが多いです。木の手入れをしたり、地域の草刈りなどに参加しています。月に1回程度の活動ですが、一つのことに集中できるため、自分にとって良いリフレッシュの機会になっています。地域の皆さんとのお付き合いも楽しんでいます」
現場からの要望・課題
「現場の同僚からは、会社から配布されたスマートウォッチと個人のスマートフォンをBluetoothで連携することへの不安や抵抗感の声がありました」
「安全管理の観点では、現場での熱中症対策が必要です。異常を感じたらリアルタイムで知らせてくれる機能が重要だと思います」
藤井香様(業務部・業務課、安全環境)
データと自己認識のギャップについて
「睡眠は足りていると思っていましたが、データでは睡眠不足傾向にあると示されていました。自覚していたより、自分はけっこうしんどかったのかなという感想です。疲れのスコアがこれほど変化するというのも驚きでした」
「ちょうど忙しい時期だったこともあり、疲れ具合が明確に表れていました」
行動変容:生活習慣や休日の過ごし方の変化
「以前は休日に疲れて起きられないこともありました。今は休日は意識的に体を動かすようにしています。走ったり、雪が降れば雪遊びしたり、ドライブなど一緒に外に出る活動も増やしました」
「食生活も見直しました。疲れを解消できるビタミン豊富なものや、筋肉低下が気になるのでお肉も食べるようにしています。一時やめていた筋トレやジム通いも再開し、運動を継続することの重要性を実感しました」
家族との共有
「私のような母親世代は、自分の疲れを家族に分かってもらえないことがあります。データとして可視化されれば客観的に伝えられて、家族がお互いの状態に気づき合い、良いコミュニケーションツールになると感じました」
大石俊也様(業務部部長)
データと自己認識のギャップについて
「自分はストレスが溜まっていると思っていましたが、そうではなかった。心の状態は良くて、それが意外でした」
行動変容:生活習慣の見直し
「山に行ったり釣りをしたりが好きなのですが、今年になってから山に行けてないです。でも天気が良ければ趣味のバイクに乗るなど、好きなことをしているのが自分にとってはいい状態です。やらされているわけではなくて、好きでやっています。何かしているのが好きなので、それが自分にとってはいい状態だと思っています」
管理者の視点から:課題と展望
「『心の疲れ』や『落ち込み』のスコアが高くなったタイミングで警告を出し、休息を促すような仕組みに期待しています」
「会社全体での導入を目指したいですが、現場には『スマートウォッチと自分のスマホ連携が不安』『データ共有への抵抗感、警戒感』があるのも事実です。今後はデータ利用の透明性とセキュリティを確保し、従業員の心理的ハードルを下げていくことが課題だと考えています」
今回の「AIでメンタルヘルスケア」実証実験を通じて、心の状態をAIで可視化することの有効性が示されました。客観的なデータで自身の状態を知り、適切な行動変容を促す仕組みは、従業員が心身ともにいきいきと働けるWell-beingな職場づくりの強力なサポートとなります。
末筆となりましたが、業務ご多忙の中、本実証実験に多大なるご協力を賜りました広島イーグル様に心より御礼申し上げます。また貴重な体験談をお聞かせくださった大石様、藤井様、藤田様、誠にありがとうございました。
アドダイスは今後もAIテクノロジーの力で、すべての人のWell-beingの実現と健康経営のサポート、そして安心な社会の実現に貢献して参ります。
ヘルスケアAI(ResQ AI)によるメンタルヘルス見守りについて、お問い合わせ・ご相談はお気軽に以下のフォームからお送りください。