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事例紹介

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北広島町役場「AIでメンタルヘルスケア」実証実験_取材にご協力いただいた職員の皆様
ヘルスケアAI・ResQ AI

北広島町「AIでメンタルヘルスケア」実証レポート ~北広島町役場・「健康で安心な町づくり」をめざして


2025年、広島県北広島町役場において、アドダイスのヘルスケアAI「ResQ AI」を活用したメンタルヘルスケアの実証実験を実施しました。約3ヶ月にわたり計測とAI解析を実施した結果、自己認識をデータが裏付ける納得感の醸成や、運動習慣とメンタル状態の連動など、個人の気づきに繋がる事例が確認されました。また行政の立場から、町民の皆様への展開可能性について率直な議論が行われ、今後の健康増進政策へのヒントが得られました。

お客様プロフィール

社名 北広島町役場(広島県山県郡北広島町)
北広島町役場「AIでメンタルヘルスケア」実証実験_北広島町町章
事業内容 地方行政・住民サービス・地域振興・健康増進政策 など
所在地 広島県山県郡北広島町

1.DX推進課が挑んだ「職員の心の健康」実証実験

北広島町役場は、広島県北部に位置する人口約1万6千人の町の行政を担う組織です。近年、全国の自治体同様に、職員のメンタルヘルス対策や住民の健康増進が重要な行政課題となっています。

アドダイスとの出会いは、広島県の「The Meet 広島オープンアクセラレーター Gov-Tech-Challenge」でした。この中で北広島町が掲げた「みんなの暮らしをデジタルで便利に楽しく!」等の課題に対し、アドダイスが提案した「ResQ AIを活用した心身の健康見守り」が採択されたことがきっかけです。

本件をご担当いただいたのは、北広島町役場「総務課 DX推進係」です。DX推進係は、本実証において実証先企業(広島イーグル株式会社様・株式会社JMS千代田工場様)のコーディネートと推進を担うとともに、職員の皆様にも実証に参加いただきました。この町で働き、あるいは生活する当事者としての視点と、行政としての推進者・政策立案者としての視点を併せ持ちながら、実証に臨んでいただきました。

北広島町役場「AIでメンタルヘルスケア」実証実験_実証実験開始前のご説明会を実施(2025年2月)

実証実験開始前のご説明会を実施(2025年2月)

北広島町役場「AIでメンタルヘルスケア」実証実験_町長、副町長、総務課長の皆様に結果をご説明(2025年12月)

町長、副町長、総務課長の皆様に結果をご説明(2025年12月)

2.実証実験の概要および目的

概要

  • 期間:2025年9月29日~12月21日(約3ヶ月間)
  • 参加者:北広島町役場 総務課 DX推進係 職員の方 6名
  • 手法
    1. スマートウォッチ(ResQ BandまたはFitBit)でバイタルデータを継続測定
    2. ヘルスケアAI(ResQ AI)でデータを解析し、心の状態をスコアリング
    3. AI解析結果とアドバイスを記載したレポートを、毎週、各個人に送付
      • 6名を2分割し、それぞれ異なるレポートを提供
      • 内容の違いが自発的な行動変容や健康状態に与える影響を比較検証
        • A)介入群(3名)→ 個人ごとに異なる「個別レポート」
        • B)コントロール群(3名)→ 全員同じ内容の「汎用レポート」
    4. 実証期間中に2回のInBody計測(身体組成)を実施し、筋肉量・体脂肪率などを測定

目的

  1. メンタル不調の早期検知(未病対策)
    未病状態をAIで早期に検知し、適切なタイミングでのアプローチ(介入)を可能にする体制を目指す
  2. 行動変容とレジリエンス向上の検証
    毎週のレポートで自分の状態を客観的に把握し、運動や休息など自発的な行動変容や、ストレスに対するレジリエンス(回復力)の向上にどう影響するかを検証する
  3. 生活リズムの乱れの可視化
    就寝・起床時刻のばらつきや睡眠の質をモニタリングし、生活リズムの乱れを客観的に把握する
  4. レポート送付(介入)と心身指標の相関検証
    週に一度のレポートによる介入が、メンタルにどのような影響を与えるかを分析する
北広島町役場「AIでメンタルヘルスケア」実証実験_介入群とコントロール群で異なるレポートを送付

介入群とコントロール群で異なるレポートを送付

ResQ AIが生成する心身状態レポートのイメージ

週次レポート(イメージ)

3.実証結果 〜行政としての「気づき」と「問い」が生まれた

3ヶ月の実証を経て、6名の皆様のデータから以下の結果が判明しました。
※ここで言う「疲労」「疲れ」とは、ストレスや落ち込みなど主に「心の疲れ」を指します。

自分の状態を客観視することが、主体的な健康管理への第一歩

ご自身のレポートを見た時の感想として、半数以上の方から「感じていた通りだった」「予想通りだった」というお声をいただきました。業務負荷が高い時期にストレスのスコアも上昇した方、逆にプライベートより仕事をしているほうストレスのスコアが低い方など人それぞれですが、いずれも「自分の想像通りだった」とのこと。「なんとなくそうだろうと思っていたことが、データで裏付けられた」という感想をいただきました。

体感や感覚は言葉にしにくく、他者にも伝えにくいものですが、データで客観視することで自分の感覚への信頼が深まり、日々の行動を見直す根拠として活用できるようになります。「なんとなくそう思った」が「やはりそうだった」に変わることで自己理解が一段階深まり、より主体的な健康管理への第一歩となり得ることが示されました。

北広島町役場「AIでメンタルヘルスケア」実証実験_自分の体感や感覚をデータで客観視したたことが、主体的な行動変容、健康意識向上のきっかけに

自分の体感や感覚をデータで客観視したたことが、主体的な行動変容、健康意識向上のきっかけに

継続的なモニタリングで「見えない不調」を検知

健康状態があまり良くない自覚があり、かつストレスも自覚し、加えて睡眠不足や運動量減少が重なった場合、ストレスのスコア、抑うつのスコアが高止まりする傾向が確認できました。こういった傾向は年に1回の健康診断やストレスチェックでは発見が難しく、3ヵ月間の継続的な測定・AI解析だからこそ可能な「見えない不調」の検知と言えます。

睡眠とメンタルの関係

メンタルが落ち込むと眠れない(睡眠の質低下)という、メンタルと睡眠の相関関係は、一般的に認識されています。今回の実証でも、睡眠時間にばらつきのある方はストレスのスコアが上昇、逆に睡眠時間が規則的な方はスコアが低下する傾向が見られ、不規則な睡眠とメンタル不調の相関関係が示唆されました。

北広島町役場「AIでメンタルヘルスケア」実証実験_Aさんは睡眠時間が不規則的、Bさんは規則的

不規則な睡眠とメンタル不調の相関関係

また自分では十分に寝ているつもりでも、睡眠中の血中酸素濃度の低下が記録されたケースがあり、睡眠呼吸症候群の可能性への気づきに繋がりました。さらに別のケースでは、薬の副作用による眠気がスコアの変化として記録されました。薬に慣れるにつれてスコアが徐々に改善していく様子も捉えられ、身体の変化を可視化して追跡した結果となりました。

北広島町役場「AIでメンタルヘルスケア」実証実験_「眠気スコア」は、高いほど眠気が強い。薬の副作用による眠気に、身体が慣れていく様子がスコアで提示

「眠気スコア」は、高いほど眠気が強い。薬の副作用による眠気に、身体が慣れていく様子がスコアで提示

継続の原動力は、仕事としての責任感

DX推進係の皆様にとって、本実証はまさに自分たちが推進する事業そのものでした。担当部署としての強い責任感がベースにあったことは、大きな推進力となりました。また参加者同士が「睡眠や健康の話をするきっかけになった」というお声の通り、実証実験がコミュニケーションの糸口になっていた面もありました。

一方で、「自分は最近、メンタルのスコアが悪い」とはなかなか言いづらく、特に全員男性という職場環境もあり、メンタルに関する本音を言い出しにくい雰囲気があったことも語っていただきました。

行政としての展開可能性と課題

本実証を通じて「町全体への健康増進政策」への展開可能性について、率直なご意見をいただきました。ビッグデータとして解析することで、北広島町住民特有の健康課題を洗い出し、ピンポイントで講座や施策を展開するという構想は理念としては描けるものの、実現にはいくつかの現実的な壁があることが提示されました。

・コストの問題

スマートウォッチやシステムの導入費用が課題。住民に配布・活用してもらうためのスキームの設計が必要。

・データの信頼性と継続率の問題

導入しても使い続けてもらえるか、途中で止めると意味がなくなる。継続活用の仕組みが重要である。

・メンタル情報の開示への抵抗感

身体データ以上に、メンタルに関する情報の共有には職員・住民ともに抵抗感が強い。「誰に、どこまで開示するのか」というコンセンサス形成が不可欠である。

・行政がデータを「持つ」ことへの違和感・抵抗感

行政に、自分の健康データを共有することへの抵抗感は払拭できていない。メリットの提示と同時に、適切なルールや透明性の確保が求められる。

住民の皆様に健康でいていただくことが、医療利用の適正化や地域の生産力維持に直結するという行政としての観点から、「健康維持へのインセンティブ設計」と「データ活用の倫理的配慮」のバランスをどう取るかが、今後の政策的な問いとして残りました。

4.参加者の声

2026年3月、実証に参加いただいた4名の方にお話を伺いました。

Fさん

データと自己認識のギャップについて

「自分の体感が、こうしてスコアとして出てくるのがすごいなと思いました。睡眠時間が短いことが数値化されてよく分かったので、睡眠を取れる時にはしっかり取ろうという意識が高まりました」

データ共有についての考え方

「家族は別に構わないと思います。でも職場での共有はちょっとはばかられます。今やっている仕事の負担に対して、この数値は適正なのかどうか?と考えてしまうと、むしろ数値は気にせず、しっかりと仕事に没頭した方がいいのかなとも思いますので、なんとも言えません」

Iさん

データと自己認識のギャップについて

「今年から環境が変わりましたので、何らかのストレスは感じるだろうなと予想はしていました。それがどれくらい影響があるかが、おおよそデータで分かりました。また睡眠時間は確保しているつもりでしたが、実際の質が伴っていないことが分かりました」

生活習慣や休日の過ごし方の変化について

「仕事で続けて議論をすることが良くあり、どれくらい続けると自分の集中力が落ちるのか、というラインが体感的に分かりました。そのラインに達したら、意識的に休憩を取るようにしました」
「朝起きてカーテンを開けない時もあったので、カーテンを開けて、まず朝日を浴びることを意識するようにしました。体感も変わりました」

データ共有についての考え方

「共有すること自体への抵抗は、自分はあまりないです。ただデータを見た人の受け取り方によって、意見の食い違いが起きる可能性はあると思います。例えば家族に共有した時、こちらの意図とは違う受け取られ方をして、逆に心理的に追い詰められることもあり得る。共有には、一定の配慮が必要だと感じます」

Tさん

データと自己認識のギャップについて

「心の疲れスコアが高くなっていた時期が、ちょうど仕事上で大きな対応があった時期と重なっていて、まさにその通りだなと思いながら見ていました」

生活習慣や休日の過ごし方の変化について

「実は実証の3ヶ月間は、レポートを見る暇もないほど仕事が立て込んでいました。InBody計測の数値が1回目より2回目の方が悪くなっていて、それは心の疲れスコアともリンクしていました。このままでは良くないと思って、そろそろ頑張ろうと思った12月末に実証実験が終わり、年末を迎えた訳です。でも数値化されたことで、自分で変えようという意識が出てきたのが良かったです」

計測デバイスについての要望

「充電ケーブルが外れやすかったのと、充電したつもりができていなかったケースが何回かありました。サイズのバリエーションがあると良いと思います。防水対応も強化していただけると助かります」

データ共有についての考え方

「スコアは、管理者にまとめて管理してもらうとルールで決まっているならOKとは思いますが、プライベートではあまり見せたくないというのが本音です」

Aさん

データと自己認識のギャップについて

「睡眠中に血中酸素濃度が下がることがあり、睡眠時無呼吸症候群の可能性を感じましたので、医療機関の受診はしようと思います」

生活習慣や休日の過ごし方の変化について

「実証実験に参加して、もっと自分の健康に気を遣おうという気持ちになりました。ずっと肩や腕が痛くて、病院に行ったら頸椎ヘルニアと診断され今も治療中です。薬の副作用で眠気が増えていた時期がスコアにもきっかけに現れていて、体の変化をきちんとモニタリングできているなとデータから感じました」
「日頃から自分の健康状態を把握することは大事だと感じたので、12月末に実証実験が終わってから、市販のスマートウォッチを購入しました」

行政の推進者として:展開可能性と課題

「行政としてこの仕組みを町民に広げるとなると、難しい壁があります。メンタルに関しては情報共有への抵抗感は大きいでしょう。身体データ(InBody)は比較的受け入れてくださっているのですが、メンタルの情報は別物だと思います。その抵抗感をどうクリアし、納得感を得るかは大きな課題です」

「どんなリターンがあるのか?が、明確に開示されないと使ってもらいにくいでしょう。心が疲れているなら休暇が取りやすくなるとか、配置転換が柔軟にできるとか、そういう組織的な動きが担保されて初めて、使ってみようという気持ちになると思います」

「一方でデータをビッグデータとして集約し、町の健康増進の取り組みや啓発につなげていくという活用には、大きな意義があると考えています」

「個人的には、いまの自分の在住自治体に、自分のメンタル情報を出したいとはまったく思えません。でも、危険な状態のときには助けてほしいという気持ちもある。そのバランス、納得感のある情報の使い方をどう設計するかが課題だと感じています」


今回の実証実験を通じて、心身状態の可視化が、自己認識の変化や健康意識を高めるきっかけとして機能することが確認されました。

また行政組織という推進者のお立場から参加いただいたことで、個人の健康管理を超えた「住民全体の健康増進政策」への展開に向けた議論が深まりました。メンタル情報の開示への抵抗感、データ活用の倫理的配慮、継続的な活用を担保する仕組みなど、行政ならではのリアルな課題と向き合ったこの実証は、今後に向けた貴重な知見をもたらすものとなりました。

末筆となりましたが、業務ご多忙の中、本実証実験の推進に多大なるご尽力を賜りました北広島町役場の皆様に心より御礼申し上げます。また率直なご意見をお聞かせくださった参加者の皆様、誠にありがとうございました。

アドダイスは今後もAIテクノロジーの力で、すべての人のWell-beingの実現と健康経営のサポート、そして安心な社会の実現に貢献して参ります。

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