【ヘルスケアAI・PoCレポート】コクヨ株式会社・ワークスタイルイノベーション部 オフィス環境の変化が働く人に与える影響について、予兆制御AIで可視化する実証実験を実施
2025年4月~10月、コクヨ株式会社ワークスタイルイノベーション部と株式会社アドダイスは、オフィス環境の変化が働く人に与える影響について、バイタル測定と予兆制御AI解析というアプローチによる実証実験を実施しました。本記事では、その過程と結果についてご報告します。
本件に関するプレスリリース(2026.01.08)
アドダイス、コクヨ株式会社と共に、オフィス環境の変化が働く人に与える影響について、予兆制御®AIで可視化する実証実験を実施〜人的資本経営の視点から、オフィス環境と人との関係性定量化への試み
1. 実証概要
コクヨ株式会社ワークスタイルイノベーション部は、ワークスタイルを主軸に、実現要素(ワークプレイス・制度・ツール・運用)を統合設計する組織です。戦略立案から設計・運用・効果検証まで伴走し、「働き方×場」をデータと科学的手法で解明し、実装につなげています。その一環として、オフィスと人との関係性を科学的に解明する取り組みを続けておられます。
同部は2025年6月~8月にかけて行われる営繕工事に伴うオフィスの一部閉鎖を控えていました。そこでアドダイスの予兆制御AIに基づく「ヘルスケアAI」に着目いただき、オフィスの一部閉鎖に伴う環境の変化が、働く人にもたらす影響を定量的に把握することを目的に実証実験を実施することとなりました。
2025年4月より、同部の皆様24名※に日常的にスマートウォッチを装着いただきバイタルを測定、ヘルスケアAIが解析を行い心身の状態をスコア化し、働く環境の変化による心身への影響の可視化を試みました。
※実証実験開始から終了までの延べご参加人数。
実証実験の流れ
- 参加者はスマートウォッチを装着
- 心拍数、皮膚温などのバイタルデータをクラウドのAIに送信
- ヘルスケアAIが解析
- 心身の状態を2種類のAIスコアとして提示

実証実験の流れ

タイムライン
測定は2025年4月下旬から開始し、オフィスの一部閉鎖が行われた6月頃の約3ヶ月間を経て10月まで実施され、11月に最終報告をさせていただきました。
2.実証結果
今回測定したバイタル値およびAI解析値は、以下の3つです。
- バイタル:心拍数、皮膚温、血中酸素濃度、呼吸数、BP、歩数、心拍変動、睡眠時間
- AIスコア(気持ちの疲れスコア):0~10で表し、値が高いほど「疲れ」が高い
- AIスコア(気持ちの沈みスコア)0~10で表し、値が高いほど「沈み」が大きい
結果は以下の通りです。
- 全期間を通じた全員の合計平均値は、バイタル、気持ちの疲れスコア、気持ちの沈みスコア、すべての値において、オフィスの一部閉鎖前後で大きな差は確認されませんでした。
- 個人に着目すると、オフィスの一部閉鎖前後に、気持ちの疲れスコア、気持ちの沈みスコアの変化があった方が複数いらっしゃいました。気持ちの疲れスコアが大きく上昇した方(変化量+ 7.8、+ 6.1など)と、下降した方(変化量-6.1、-6.0など)がそれぞれ確認されています。
- 上記2つのAIスコアを平均値でプロットすると、3群に分けられる可能性が示されました。
- クラスタA:気持ちの疲れスコア、気持ちの沈みスコア、共に低い群
- クラスタB:気持ちの疲れスコアは低く、気持ちの沈みスコアが高い群
- クラスタC:気持ちの疲れスコアが高く、気持ちの沈みスコアが低い群

クラスタ分布のイメージ
オフィス環境の変化は、全体には顕著な変化をもたらしませんでした。一方個人単位では、気持ちの疲れの増加、減少が顕著だった方がいらっしゃったことがわかりました。この個人差の可視化は、今後のオフィス設計やマネジメントにおいて、個別最適なアプローチを検討する上での重要な知見となります。勤務時間の長短、在宅勤務頻度、業務上の個別事情などと関連付けることで、さらに解析を深められる可能性があります。
3.報告会について
11月の最終報告に先立ち、8月には同部の社内セッションに参加させていただき、弊社CEO伊東大輔より、疲れのAIスコアが高めの方の事例と、疲れの解消方法などについてご紹介させていただきました。

事例:気持ちの疲れをあらわすAIスコアが高止まりしていた方 2025年6月7日~7月6日(一ヶ月間)
AIスコアは数値が高いほど、心身に疲れがある状態を示します。5を超えると注意が必要で、5以上が数週間継続している場合は、疲労を解消する何らかの手を打つことが推奨されます。
この方の1ヶ月間の平均スコアは6.64で、特に6月16日以降は高止まりしています。この期間に通常と違うことがあったかお話を伺ったところ、6月16日以降は業務が集中し遅くまでお仕事をされる日も多く、画面を見ている時間もいつもより長かったそうです。
長時間の一点凝視は、脳を疲労させます。ノルアドレナリンが分泌され、心身が緊張した「戦闘モード」が継続した状態です。これにより、スコアの高止まりとなったと推測できます。
脳の疲れを解消する一つの方法としては、「周辺視」があります。視線を分散させ、人や緑など生身のものを見ることでリラックスモードに切り替わり、疲れをなくすことがでます。

周辺視を織り交ぜることで脳の疲れをとる
周辺視野の社会交流における重要性 Lange R, Kumagai A, Weiss S, et al. Vision-related quality of life in adults with severe peripheral vision loss: a qualitative interview study. J Patient Rep Outcomes. 2021
4.まとめ
企業が社員の健康に関心を持つ背景には、心と身体の健康が組織全体のパフォーマンス発揮の基盤であり、=MVS(Mission・Vision・Strategy)へのコミット、組織へのエンゲージメント向上を通じた価値創造につながるという「人的資本経営」の視点があります。
私たちは、オフィス環境と人の健康の関係を定量的に捉えることで、人的資本経営への科学的アプローチの一助となると考えています。
心身の疲労を予兆制御AIで可視化することで、「働く人にとって良いオフィスとは何か?」「生産性を高めるにはどうしたらいいか?」を、感覚ではなく科学的に捉える第一歩となります。バイタル計測とAI解析で、快適性と生産性を両立するオフィス設計をより精度高く実現できるとアドダイスは考えています。
そしてこうした取り組みの積み重ねが、より良いオフィス環境と人のWell-beingを両立する、次世代のワークプレイス創造へとつながって参ります。
最後に、PoCにご協力いただきましたコクヨ株式会社ワークスタイルイノベーション部の皆様に、深く御礼申し上げます。

2025年8月に開催したコクヨ様への報告会
以上
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