北広島町「AIでメンタルヘルスケア」実証レポート ~株式会社ジェイ・エム・エス 医療機器メーカーが挑む心の健康
株式会社ジェイ・エム・エス(以下、JMS)千代田工場(所在地:広島県山県郡北広島町)にて実施された、「AIによるメンタルヘルスケア」実証実験のレポートをお届けします。
JMS様は、新しい取り組みに積極的な社風もあり、参加者10名全員が離脱することなく、データ完備率80%超という極めて質の高い結果を残しました。
ヘルスケアAI「ResQ AI」による24時間の見守りを通じて、健康診断では見逃されがちな「重度メンタル疲労」の潜在者を100%検知することに成功しました。さらに、AIレポートを通じて自身の状態に気づくことが、従業員の自律的な「行動変容(睡眠の確保や歩数の増加など)」を促し、疲労感を大きく軽減させた成功事例も確認されています。
客観的なデータがもたらす「納得感」と、負荷がかかっても自律的に元の状態へ戻る同社の「組織のレジリエンス(回復力)」について、参加者の皆様の声とともにご紹介します。
お客様プロフィール
| 社名 | 株式会社ジェイ・エム・エス![]() |
| 事業内容 | 医療機器、医薬品の製造・販売及び輸出並びに輸入 |
| 所在地 | 広島市中区加古町12番17号 |
1.医療機器メーカーが挑んだ従業員の「心の健康」
JMS様は、輸液・栄養、透析、外科治療、血液・細胞など幅広い領域にわたる医療機器の開発・製造・販売を行う医療機器メーカーです。今回実証にご協力いただいたJMS千代田工場は、北広島町内の氏神工業団地内にあり、各種製品づくりの拠点となっています。
アドダイスとの出会いは、広島県の「The Meet 広島オープンアクセラレーター Gov-Tech-Challenge」でした。この中で北広島町が掲げた課題に対し、アドダイスが提案した『ResQ AIを活用した「心身見守り」』が採択されたことがきっかけです。
JMS様は、医療機器の提供を通じて人と医療の架け橋となり、人々の健康で豊かな生活に貢献していこうという理念を掲げる企業です。本実証にご参加いただいた背景には、こうした健康を何より大切にする企業風土、さらに従業員一人一人の健康に対する意識の高さがあったことは容易に想像できます。
さらに製造業ということで、年々厳しくなる猛暑に向けた現場従業員の熱中症対策への期待や、メンタル不調の兆候を早期発見(未病対策)できる仕組みへの期待もいただいておりました。

北広島町:JMS 千代田工場社屋
2.実証実験の概要および目的
概要
- 期間:2025年9月29日~12月21日(約3ヶ月間)
- 参加者:株式会社JMS 千代田工場 従業員の方 10名
- 手法
- スマートウォッチ(ResQ Band)でバイタルデータを継続測定
- ヘルスケアAI(ResQ AI)でデータを解析し、心の状態をスコアリング
- AI解析結果とアドバイスを記載したレポートを、毎週、各個人に送付
- 10名を2分割し、それぞれ異なるレポートを提供
- 内容の違いが自発的な行動変容や健康状態に与える影響を比較検証
- A)介入群(5名)→ 個人ごとに異なる「個別レポート」
- B)コントロール群(5名)→ 全員同じ内容の「汎用レポート」
- 実証期間中に2回のInBody計測(身体組成)を実施し、筋肉量・体脂肪率などを測定
目的
- メンタル不調の早期検知(未病対策)
未病状態をAIで早期に検知し、適切なタイミングでのアプローチ(介入)を可能にする体制を目指す - 行動変容とレジリエンス向上の検証
毎週のレポートで自分の状態を客観的に把握し、運動や休息など自発的な行動変容や、ストレスに対するレジリエンス(回復力)の向上にどう影響するかを検証する - 生活リズムの乱れの可視化
就寝・起床時刻のばらつきや睡眠の質をモニタリングし、生活リズムの乱れを客観的に把握する - レポート送付(介入)と心身指標の相関検証
週に一度のレポートによる介入が、メンタルにどのような影響を与えるかを分析する

介入群とコントロール群で異なるレポートを送付

週次レポート(イメージ)
3.実証結果 〜気づいたら行動する文化が、ヘルスケアAIの効果を最大化
3ヶ月の実証実験を経て、10名の皆様のデータから以下の結果が判明しました。
※ここで言う「疲労」「疲れ」とは、ストレスや落ち込みなど主に「心の疲れ」を指します。
完走率100%、データ完備率80%超。圧倒的No.1の成果
JMS様では、ご協力いただいた10名全員が最後まで離脱せずに実証を完走(完走率100%)。他社の実証実験と比較しても突出した数値となりました。
データの完備率も80%を超え、AI解析に最適な高品質なデータを得ることができました。必要なデータの欠損が極めて少なく、お一人お一人の高い意識が、正確なAI解析の基盤となりました。

完走率100%、データ完備率80%という突出した成果
年1回のストレスチェックでは拾えない「不調の芽」を検知
ヘルスケアAI(ResQ AI)の解析結果から、参加者10名のうち8名が比較的重いメンタル疲労状態にあることを、拾い出すことができました。
不調は突然起きるのではなく、日々の蓄積が限界点を越えたとき、「発症(発病)」という形で顕在化します。年1回の健康診断やストレスチェックは、その瞬間の「スナップショット」に過ぎず、残りの期間は空白として、検知されないリスクが眠っている可能性があります。
AIによるメンタルリスクの予兆検知が、その「364日の空白」を埋める可能性を示しました。

ストレスチェックとヘルスケアAIによる見守りの違い
平均歩数約2倍で、心の疲れが改善
週次レポートで、歩数が1日平均「3,793歩」と知った参加者のお一人が、意識的に歩く行動を取り入れ、平均歩数が8,055歩(約2.1倍)へと増加。身体活動の増加に伴い、心に蓄積した疲れを示すスコアが30%減少し、疲労が「重度」から「中等度」へ改善しました。
フィジカル面へのアプローチが、メンタル状態の改善にも有効であることが示されました。
睡眠プラス1時間で、心の疲れが半減
週次レポートで、ご自分の睡眠状況を知った参加者のお一人が、意識的に就寝時間を1時間早めるという行動変容を行い、平均睡眠時間は「5.0時間」から「5.9時間」へ約1時間増加。これにより心に蓄積した疲れを示すスコアが約50%減少、つまり半減しました。
「毎日1時間早く寝る」という行動変容が、メンタルの疲労回復に大きな影響を与えることが実証されました。

自ら意識して行った行動変容が、心の疲労回復に効果を発揮
具体的で個別的な情報が、行動を変えるトリガーとして働く
全員が同内容のレポートを受け取っていた「コントロール群」に比べ、個別のレポートを受け取っていた「介入群」は、実証前後を比較すると、心に蓄積した疲れを示すスコアが全体的に減少していました。
介入群は、自身の状態をより具体的かつ個別的に把握することができ、それがトリガーとなって自律的に行動を調整した結果、全体的にスコアが改善されたと想定できます。
JMS様の強みは、組織のレジリエンス(回復力)
JMS様では、参加者10名中8名がストレス解消法として「人と話す」を選択。職場や家庭で気軽に話せるということは、良いストレス解消になります。対人コミュニケーションが主要なメンタルケアとして機能している点から、JMS千代田工場の風通しの良さ、心理的安全性の高さがうかがえます。
さらに心の疲れスコアが一時的に上昇した場合でも、週末や翌週には数値を戻す傾向が確認されました。これは、メンタルに負荷がかかっても自律的に健康な状態へリセットできる「しなやかな回復力(レジリエンス)」が組織に備わっていることを示しています。

心が疲れても自律的に回復できる力が備わっている
4.参加者の声
2026年2月、実証に参加いただいた3名の方にお話を伺いました。
取材にご協力いただいた方:松本浩嗣様(庶務課・課長)、錦織秀樹様(製商品管理課)、Y様
錦織秀樹様
データと自己認識のギャップについて
「心の疲れを数字で見た時、一番驚いたのが、自分のパターンが、思い込みと真逆だったことです。一般的に、仕事でストレスが溜まって、休みでストレスが下がるというイメージでしたが、逆だったんです。そういうパターンもあるんだなと印象的でした」
生活習慣や休日の過ごし方の変化について
「休みの日には遊びに出かけることが多かったのですが、自分の心の疲れのパターンを知ったことで、時には外出を控えて家でまったりする時間を増やすなど、過ごし方を変えてみました。また歩数も常に意識して、なるべく歩くよう心掛けました」
「ストレスの数値が高かった時には、自分の行動を振り返って『次はこうしてみよう』と考えるきっかけになりました。これは数値化されなければ、できなかったことですね」
Y様
データと自己認識のギャップについて
「実証実験開始直後、母と介護のことで言い合いになったことがありました。その後にスコアを確認したら、心の疲れと落ち込みの数値がばっと上がっていました。『こういうふうに現れるのか』と実感しました。その上がり方は、自分でも納得できる感じでした。その後は、スコアを定期的に確認するようになり、数値で客観視できるというのは重要だなと感じました」
生活習慣や休日の過ごし方の変化について
「自分は、睡眠が短くても眠りが深いから平気と思っていましたが、レポートを見るようになったことで、その日のうち(0時前)に寝ようと意識が変わりました。またインボディ計測を機に、朝にチーズなどの乳製品を摂るよう食生活の改善も始め、今でも継続しています」
他の参加者との対話から
「同僚との会話の中で、私が母との喧嘩でスコアが上がったと話をしたら、その方はお子さんの部活送迎が毎日大変だと言っていました。人それぞれの生活スタイルがあって、様々なパターンがあります。そういう事例を紹介いただければ、自分はこういうケースかな?など客観視できて、自分へのアプローチも変わってくると思いました」
松本浩嗣様(庶務課長)
データと自己認識のギャップについて
「自身の傾向として、木・金になるとスコアが上がっていって、月曜日には下がっている。会社に来たら疲れがリセットされるパターンで、自分の1週間のリズムが可視化されたのは面白かったです」
生活習慣や休日の過ごし方の変化についてし
「実は、私はあえてレポートのアドバイス(心の疲れの解消)には従わず、特に変えることはしませんでした。今の生活スタイルでどうストレスが溜まるのか?観察してみた次第です。3ヶ月間続けてみて、自分のストレスがどう蓄積されるか見極めができ、自己認識が深まり、自分を客観視するきっかけになりました」
管理者の視点から:職場でのコミュニケーション
「実証中、睡眠中の血中酸素濃度が著しく低下たという同僚がいたのですが、『枕を新しくしてみたらどうか?』など、健康に関する話題が職場の中で自然に出るようになったのは、良かったと思います」
管理者の視点から:今後の課題と展望
「もともとは、猛暑への熱中症対策を期待してスタートしました。メンタル不調の早期発見システムとしても期待していますが、異常値が出た際のアラート通知がタイムリーでなければ管理者は対応が難しいため、その点の改善を希望しています」
「基準値を超えた際に管理者のスマートフォンに届くアラート通知について、通知のタイミングが遅く『いま通知されても対応できない』と感じました。熱中症などの対応においては特に遅れが許されないため、管理者へ通知するのであれば、もっとタイムリーな通知機能へ改善してほしい」
管理者の視点から:全員が離脱せず完走できた理由について
「元々、新しいことに積極的に取り組んでいくことを推奨する社風です。特に今回は、以前別の実証実験に参加したメンバーを中心に選定したため、あまり苦にならなかったのではないかと思います」

完走率100%・データ完備率80%超という圧倒的な数値が示すのは、「言われてやる」ではなく「気づいて自ら動く」文化が組織に根付いていること。レポートの気づきを行動へとつなげるヘルスリテラシーの高さが、介入効果を最大化しました。
末筆となりましたが、業務ご多忙の中、本実証実験に多大なるご協力を賜りました株式会社JMS様に心より御礼申し上げます。また貴重な体験談をお聞かせくださった皆様、誠にありがとうございました。
アドダイスは今後もAIテクノロジーの力で、すべての人のWell-beingの実現と健康経営のサポート、そして安心な社会の実現に貢献して参ります。
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