第5回 日本腎・血液浄化AI学会学術集会・総会で、予兆制御AIに関する講演を行いました!
腎・血液浄化分野でのAI活用を目指す学会
日本腎・血液浄化AI学会は、2021年に発足した、腎臓・血液浄化療法の領域におけるAIの普及・発展を目指す学会です。医師、医療関係者、研究者など様々な立場の方が、血液浄化療法領域におけるAIの活用を目指し活動しておられるという、先見の明あふれる意欲的な学会です。
このたび光栄なことに、2025年10月19日(日)に開催された同会の第5回学術集会・総会にお招きいただき、特別講演登壇の機会を頂戴しました。
当日は、会場となった広島大学霞キャンパスに300名近い皆様が集まり、一日を通して数々の講演やワークショップが開催され大変な盛況となりました。
- 日程:2025年10月19日(日)
- 会場:広島大学 霞キャンパス凌雲棟
予兆制御AIと、腎・血液浄化医療の可能性
講演に先立ち、事前に透析の専門家の方にお話を伺う機会を得、透析現場の現状や課題を把握することができました。講演では、その課題解決にアドダイスの予兆制御AIがどのように貢献できるかお話させていただきました。
予兆制御AIは、バイタルデータなど様々なデータから、「ある出来事が起こるN時間前に予兆を捉え、寄与因子を特定し、状態管理を行う」ことができるAIです。
例えば透析中は、30分毎など頻繁に血圧を測るそうです。透析は体内の水分を抜くため、急激に血圧が低下することがあり、めまいや吐き気、意識障害なども起こるため、小まめな血圧測定で患者の状態をモニターすることは欠かせないそうです。
そこで予兆制御AIでバイタルを見守り、血圧が低下する前の予兆を捉えたらお知らせする、また欠ある低下を引き起こす寄与因子を特定し、早めに手を打つことができるのではないかというお話を、半導体製造工場における予兆保全の事例になぞらえてご紹介しました。

潜在的なリスクの「芽」に気づく(機械装置の場合のイメージ)
また患者さんだけでなく、透析装置の見守りにも予兆制御AIが活用できます。
連日稼働する透析装置が、故障やトラブルで透析中に予期せぬ停止をしては大変です。予兆制御AIは、装置の状態を常時監視し、エラーが起きるリスク、部品が故障するリスクなどを捉えてお知らせすることで、透析中の停止といったトラブルを回避することができます。
解析に用いる様々なAI技術
ご来場の皆様は医療等の専門家でいらっしゃると同時に、AIについても知見の深い皆様です。私はデータサイエンティストとしての立場から、AIの技術的なお話もさせていただきました。
AIのデータとモデル、そしてアウトプットのお話から、AIモデルのイメージ、データ量の多寡がある場合のそろえ方、人工的なデータ量増加の手法など、さらに生成AIと予兆制御AIの相違点などもご紹介しました。

AIモデルのイメージ

データ量をそろえる手法のご説明
透析医療では、患者さんごとに異なる症状や体調、生活環境等を斟酌しながら、透析時の血圧管理や除水設定などの判断が求められます。予兆制御AIは、患者さんのバイタルデータから様々なリスクの芽をとらえ、先手を打った予防措置を支援するともに、個々の患者さんにあわせてAIが自律的に再学習を行い、個別カスタマイズされたAIとして透析を見守る役割を果たします。
このたびの講演が、今後の透析医療におけるAI活用の一助となれば幸いです。